住民投票は成立しなかったが、投票結果を尊重し、社会が多様なエネルギーの選択を望んでいることを理解している。原子力は科学の問題であり、一度の住民投票で解決できるものではない。

75%の基準には僅かに届かなかったものの、74%を超える賛成票が投じられた「投票結果を尊重し、社会が多様なエネルギーの選択を望んでいることを理解している」と述べたことは、頼総督が原発の再稼働に含みを持たせた発言である、と筆者には感じられる。

そう思う理由は、ワシントンに拠点を置く「戦略国際問題研究所(CSIS)」が7月末に公表した160頁余りに及ぶウォーゲーム報告書「Lights Out? Wargaming a Chinese Blockade of Taiwan」(以下、「報告書」)だ。日本語では「灯りが消える?中国が台湾を封鎖するウォーゲーム」といった意味になろう。

まるで8月23日の住民投票に合わせたかのようなタイミングで公表され、筆者ですら目にしたこの「報告書」を、ハーバードで医学を修めた頼総督と米国人と台湾人を両親に持ち駐米台北経済文化代表処(駐米大使に相当)を務めた蕭美琴副総統という、米国通の二人の指導者が熟読していないとは思われないのだ。

「中国が台湾を封鎖するウォーゲーム」(以下はAI翻訳と拙訳による)

「報告書」の「Executive Summary」は先ず、封鎖が如何に広範にわたるかを理解するべく26通りのシナリオでウォーゲームを実施し、それらを分析して、各当事者、すなわち中国、台湾、米国そして日本が、封鎖の実施とそれへの対抗において直面する運用上の課題を評価すると述べる。

その結果、紛争(海上封鎖など)が避けられないとか、可能性が高いとは主張していないが、中国の武力行使を辞さない統一への拘泥や、継続的な軍事増強を考慮すると紛争の可能性は存在するとし、封鎖を阻止するための政策変更の提案と、万一封鎖が発生した場合に対応するための対策の提言を結語としている。