万博で示す、循環型社会の実例

こうした挑戦を社会に伝える場として、テトラパックが参加しているのが、現在開催中の大阪・関西万博だ。デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの北欧5カ国が共同で出展する「北欧パビリオン」に、テトラパックはプラチナスポンサーとして参画している。
「万博は、私たちの取り組みを具体的な形で示す貴重な機会です。私たちは北欧の企業とともに、グリーントランジション、ライフスタイルとウェルビーイング、モビリティとコネクティビティといった社会の重要なテーマに向き合い、新しい価値を発信しています。そして日本でも多様なパートナーと連携し、強靭な食品システムの構築や資源循環を通じた持続可能な社会づくりに向けた取り組みを発信しています」(同)
北欧パビリオン内で提供されているボトルドウォーターは、使用済みのアルミ付き紙パックの古紙を使用した再生段ボールに梱包されたうえで出荷・輸送されている。また、会場内で回収された使用済みの紙パックについては、大阪・関西万博の協賛者であるリサイクル事業者によって再資源化され、大阪・関西万博の会場内でトイレットペーパーとして使用される。このように、日本国内で進めてきた紙資源のリサイクルの実例を、実際の社会インフラとして可視化している。
たとえば、私たちがリサイクルに出した紙パックがトイレットペーパーや段ボールに生まれ変わり、また社会で役立っていく──そんな小さな循環の積み重ねも、未来の社会を支える「共創」のひとつなのだ。
食品や容器の“裏側”で、こうした企業やパートナーたちが静かに動いていたことに気づいたとき、社会課題の解決は決して遠い話ではなく、私たちの日々の暮らしとつながっていることを実感するだろう。
2050年ネットゼロに向けて──容器におけるライフサイクル全体で描く循環の未来
日本市場では、包装資材メーカーというイメージが強いテトラパック。だからこそ、食の安全保障や循環型社会づくりといった“大きな視点”を示すことで、同社の本質的な役割を社会に問いかけているのだ。
こうした循環型社会への取り組みは、リサイクルだけではない。テトラパックの紙容器は、約70%が原紙で、再生可能資源である木から作られている。原紙は持続可能な森林管理を認証するFSC®(森林管理協議会)認証を取得しており、適切に管理された森林やそのほかの管理された供給源からの木材を原料として使用している。
さらに、キャップやラミネートなどには、植物由来のプラスチック(サトウキビ由来のポリエチレン)が採用可能で、化石燃料由来の資源への依存を低減。これらの素材はサプライヤーと協働しながら、カーボンフットプリント削減も実現してきた。
近年では、紙ベースのバリア素材の開発も進み、将来的には「完全に再生可能資源で構成された紙容器」の実現を目指している。
包装そのものだけでなく、使用後のリサイクルや再生可能素材の活用も含めて「循環の仕組み」を製品の一部と考えているのだ。
「私たちは、グローバル全体で2050年までにバリューチェーン全体で温室効果ガス排出量ネットゼロを目標に掲げています。目標達成に向けた取り組みの一つとして、年間約1億ユーロ(約160億円)の研究開発投資の多くを、紙容器の素材構造の簡素化、再生可能資源使用率の向上、リサイクルの改善などに注いでいます。素材開発だけでなく、リサイクルインフラ支援や再生プロセスの改善まで、容器のライフサイクル全体で環境負荷を下げる努力が求められているのです」(同)