研究チームは、実際の生活環境に近い形で整髪を再現するため、実験用の小型住宅を使用しました。

被験者は合計7名(男性・女性)で、それぞれが普段使っている整髪料(クリーム、スプレー、美容液など)ヘアアイロン、カールアイロン、ドライヤーを持ち込みました。

合計21回のスタイリングセッションが行われ、道具の表面温度は一般的な150℃〜230℃に設定されています。

その間研究チームは、ナノ粒子測定器)化学成分測定装置を使って、空気中に含まれるナノ粒子の数と種類、そしてそのサイズ分布をリアルタイムに測定しました。

また、呼吸によってどのくらいの量が肺に沈着するかも、粒径と呼吸モデルに基づいて計算されました。

1回の整髪で100億個以上のナノ粒子が肺に沈着しているかも

実験の結果、わずか10〜20分の整髪中に、空気中には1立方センチあたり1万〜10万個のナノ粒子が発生するケースが観測されました

特にアイロンやコテの温度が150℃を超えたあたりから、粒子の発生量が急激に上昇。

実験の中では、特に230℃でスタイリングを行ったケースで、最大で100億個以上のナノ粒子が呼吸器内に沈着する可能性が示されました

この数字は、タバコを数本吸ったときの肺への影響に匹敵する量とされています。

ナノ粒子は非常に小さく、鼻や喉をすり抜けて肺の奥深く、肺胞(はいほう)と呼ばれる部位にまで沈着します。

こうした粒子は血流にまで入りこむ可能性があるのです。

では、なぜこんなにも大量の粒子が発生するのでしょうか?

研究によれば、多くのヘアケア製品に含まれるシロキサン類(とくにD5と呼ばれる成分)が熱によって気化し、その蒸気が冷やされることでナノサイズの微粒子に凝縮すると分かっています。

つまり、熱、整髪料、そして室内空気の化学反応が重なり、見えない「ナノ粒子スモッグ」が一瞬にして発生しているというわけです。