研究では、イギリスの健康データベースを使って、18歳から35歳の健康な男女100名の中から、習慣的な水分摂取量が特に多いグループ(平均4.4リットル/日)と、特に少ないグループ(平均1.3リットル/日)の計32名が選ばれました。
参加者は1週間にわたり、日常的な水の摂取量を記録しました。
その後、Trier Social Stress Test(TSST)と呼ばれる社会的ストレス誘発試験に参加しました。
この試験では、模擬面接や暗算課題を行い、心理的ストレスを意図的に引き起こします。
研究チームは、TSSTの前後で唾液中のコルチゾール濃度、血中のコペプチン(水分調整を行うホルモン「バソプレシン」の安定な指標)、尿の色と浸透圧(体内の水分状態の指標)、そして主観的な不安感、心拍数、血圧を測定しました。
水分が不足しているとコルチゾールが55%も多く分泌される
研究結果は驚くべきものでした。
ストレステスト中、両グループとも主観的な不安感や心拍数の上昇は同程度でしたが、コルチゾールの反応には明確な差が出ました。
コルチゾール濃度の変化は、水分摂取が少ないグループで平均6.2ナノモル/リットル、水分摂取が多いグループで平均4.0ナノモル/リットルでした。
これは、水分摂取量が少ないとコルチゾール濃度が約55%も高くなり、その反応が強まることを意味しています。
統計的に有意であるだけでなく、生理学的にも重要な差と評価されました。
では、どうして水分摂取量が少ないと、体内でストレスホルモンが溢れるのでしょうか。
研究チームは、水分摂取量が少ないグループは、コペプチンの濃度も水分摂取の少ないグループで有意に高くなっていることも発見しました。
これは、体が慢性的な脱水状態にあることで、水分調節を促すバソプレシン系が過剰に働いていたことを示しています。
しかし、バソプレシンは腎臓で水分を保持する作用を持つだけでなく、下垂体に働きかけてACTH(副腎皮質刺激ホルモン)を分泌させ、最終的にコルチゾールの分泌を促します。