なぜアームストロングは月ではなく“洞窟”を目指したのか

 この謎に満ちた洞窟の名を世界に轟かせたのが、『神々の戦車』などで知られる作家エーリッヒ・フォン・デニケンだ。彼は著書『未来の記憶』の中で、モーリッツの案内でこの洞窟を探検し、その人工的な構造に衝撃を受けたと記した。彼の本は世界的なベストセラーとなり、タヨスの洞窟はオーパーツや古代宇宙飛行士説の聖地として、一躍注目を浴びることとなった。

 この熱狂は、ついに国家をも動かす。1976年、イギリスは史上最大級の洞窟探検隊を組織。科学者、軍人、そして映画クルーに混じって、その探検隊には信じがたい人物が参加していた。人類で初めて月面に降り立った男、宇宙飛行士ニール・アームストロングである。月面着陸からわずか数年後、なぜ彼は月の石ではなく、地球の奥深くの洞窟を目指したのか。その理由は、今なお謎に包まれている。

人類史を覆す“失われた図書館”か ― 月面着陸の英雄アームストロングも探した、謎の古代洞窟「クエバ・デ・ロス・タヨス」の画像6
(画像=ニール・アームストロング 画像は「The Ancient Code」より)

探検隊が見たもの、そして残された謎

 大規模な調査にもかかわらず、イギリスの探検隊は、デニケンが主張するような異星人の宇宙船や、「金属の図書館」を発見することはできなかった。

 しかし、探検は無駄ではなかった。洞窟の物理的な特徴はデニケンの記述と一致する点が多く、考古学的にも興味深い遺物が発見された。そして、探検が終わった後、モーリッツの情報源であったシュアール族の長老は、こう語ったという。

「彼らが調査したのは、間違った洞窟だ。本当の洞窟の場所は、秘密なのだ」と。

「タヨスの洞窟」の真の姿は、今もなお厚いベールに覆われている。そこには本当に人類の失われた歴史が眠っているのだろうか。それとも、すべては壮大な作り話なのか。月に立った英雄までもが探し求めたこの洞窟の謎。それは、我々が教えられてきた歴史が、壮大な物語のほんの序章に過ぎないことを告げているのかもしれない。

参考:The Ancient Code、ほか

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