つまり健常群では興味があってもなくても、課題に対して脳はある程度反応を示すのに対して、ADHDの子どもは、興味が持てない課題には脳がほとんど反応しないのです。
健常群とADHD群の脳反応の違いを示した画像
これはADHD傾向のある人が「興味がないことには取りかかれない」という問題を、脳科学のデータから示したと言えるでしょう。
さらにこの研究では、ADHDの子どもに3カ月間日本で認可されているADHD治療薬(メチルフェニデート徐放製剤)を飲んでもらったあと、同じ課題を再び行ってもらうという調査も行っています。
するとこの実験では、それまで興味のない課題には沈黙していた脳の反応がしっかりと現れるようになり、健常群の反応に近づいていたという。
この結果は、一般の人とADHD傾向を持つ人の課題に対峙したときの気持ちの違いを示唆しています。
脳がほぼ反応しないということは、普通なら興味が持てない仕事や宿題のようなものでも「仕方ないけどやるか」となるところが、ADHD傾向のある人ではやろうとも思わないということになります。
ただ、注意しなければならないのは、これがADHD傾向を持つ人の脳の特性だということです。
社会でも学校でもこうした態度は、本人か不真面目だから、怠けているからと受け取られがちです。しかし、薬でもある程度改善が示されているように、これは本人の性格特性とは関連していません。
怠け者だからやろうともしない、ということではなく、脳がやろうという反応をしてくれないという点に原因があります。
この研究で見られた脳活動にはADHDの人は「小さな達成感を感じにくい」という可能性も示されています。
そのため、ADHDの人がなかなか課題に集中して取り組めないという問題に悩んでいる場合、課題を細かく区切ってすぐに目に見えるご褒美を用意する、始めの一歩には少し大きめの報酬を与えるなど、達成感に対する工夫がより効果的になるかもしれません。