やらなければならない作業を後回し、先延ばしにしてしまう。
これは誰にでもあることに思えますが、ADHD傾向を持つ人において特に顕著に見られる問題の1つです。
特に興味のあることには高い集中力を見せる一方で、興味のないことには極端なほどやる気が無くなります。そのため周囲から見ると怠け癖がひどい、仕事を舐めていると思われてしまいがちになります。
では、このときADHDの脳では一体何が起こっているのでしょうか?
理化学研究所(RIKEN)や大阪市立大学(Osaka City University)らの研究チームが、さまざまな条件で課題に挑む子どもの脳活動を調べたところ、ADHDの人は「報酬が少ない課題」に対しては脳がほとんど反応しないことを報告しています。
これが集中が安定しない原因の1つになっているようです。
目次
- ADHDの“やる気スイッチ”
- 報酬が小さいと、ADHDの脳は沈黙する
ADHDの“やる気スイッチ”
ADHD(注意欠如・多動症)は「集中できない」「忘れ物が多い」といった行動で知られています。
こうしたADHD特有の注意力の問題はどこから生じるのでしょうか? この疑問について研究者たちはその背景に「ご褒美の感じ方」の違いがあるのではないかと考えてきました。
というのも、人は普通「これを頑張ればご褒美がある」と期待することで、注意を持続させたり、面倒な作業に取り組んだりします。ところがADHDの人は、その「ご褒美への期待」や「実際にご褒美をもらったとき」の脳の反応が弱いために、行動を長く続けにくいのではないか、というのです。
こうした背景のもと、2013年に日本の研究チームがある予測をもとに実験を行い、興味深い報告をしています。
それが「少額の報酬に脳が反応しにくいことこそが、ADHDの“やる気が続かない”特性の正体なのではないか」というものです。
この研究では、10〜16歳の男子で、ADHDと診断された子ども(ADHD群)17人と同年代のADHDではない子ども(健常群)17人を対象に、「お小遣いゲーム」をしてもらいました。女子を含めなかったのは、解析をシンプルにして年齢や発達段階の影響を最小限にするためです。