このゲームは、PC画面上で行うもので、3枚のカードから1枚を選ぶと、0円、30円、または60円が当たるという内容で、1ゲームに8回カードを引けます。
ただし、このゲームには裏設定があり、あるときは“高額が出やすい(60円が出やすい)”、あるときは“少額しか出ない(30円しか出ない)”、そして“まったく当たらない”ようになっています。そして、それぞれの設定によって画面の色が異なるようになっていました。
つまりゲームを繰り返すうちに子どもたちは、画面が赤なら“この後はお金が出る”、青なら“お金が出ない”というように、その回のゲームの報酬が大きいか小さいか予想できるように設計されているのです。
このような実験デザインにする目的は、報酬を予測可能にすることで、参加者の課題に対する興味の大きさをコントロールするためです。
単純に課題に興味を持てるかどうかは、その人の嗜好に左右されるので制御が難しいですが、報酬の大きさを事前に予測できるようにすれば、参加者の課題への興味を擬似的に再現できます。
そして参加者には「できるだけ多くのお金を稼いでね」とだけ伝え、本気で取り組んでもらい、その間の脳活動を機能的MRI(functional MRI;fMRI)で測定しました。
fMRIは、脳が活動した部位で増える血流の変化を画像として記録する方法です。
こうして研究チームは、報酬の大きさとの関連を用いて、興味のある課題とない課題に対する、ADHD群と健常群の脳活動の違いを調査したのです。
報酬が小さいと、ADHDの脳は沈黙する
実験の結果、ADHDの子どもたちの脳は「大きなご褒美」がかかった場面では健常群とほとんど同じように活発に働いていました。
ところが「小さなご褒美」しか予想できないとき、健常群ではしっかり活動していた脳の中枢(側坐核や視床と呼ばれる領域)が、ADHDの子どもではほとんど反応していなかったのです。