研究参加者はニューヨーク市ブロンクスの住民で、年齢は25〜65歳の252人です。この中で少なくとも3日分の連続データが取得できた251人が解析対象となりました。
参加者は14日間、1日5回の通知にあわせて、その時点の気分を回答しました。
結果として、多数の“気分の瞬間測定”が集まりました。通知の時間は各自の生活リズムに合わせて活動時間帯にランダムに配置され、平均で約2時間半ごとにアラートが鳴る設計でした。
孤独感は「人から切り離されている」「理解されていない」といった感覚を尋ねる質問票で測定され、全国平均を基準にした得点が高いほど、孤独感が強いことを意味します。
また、気分は「嬉しい」「楽しい」といったポジティブ感情と、「緊張」「落ち込み」などのネガティブ感情の両方を0〜100のスケールで答えてもらいました。
研究では「昨日と今日でどれくらい気分が変わったか」を数値化し、気分の安定しやすさを指標にしました。
さらに、年齢や性別、結婚の有無といった基本情報に加えて、うつ症状などの影響も考慮し、孤独そのものの影響を切り出す工夫がされています。
このように研究は「その場の気分をくり返し測る」「日ごとの差を数値化する」「関係しうる要因を取り除く」という工夫を組み合わせ、孤独と気分の安定性の結びつきを確かめました。
孤独な人ほど気分が安定せず、とくに「楽しさ」が長続きしない
分析の結果、孤独を強く感じる人ほど、日常の気分が不安定であることが分かりました。
特に注目されたのは「ポジティブ感情(嬉しい、楽しい、喜びなど)」の揺れやすさです。
孤独感が高い人は、気分が上がってもそれが続きにくい傾向を示しました。
つまり「楽しいことがあっても、その気持ちが長持ちしにくい」のです。
今回の研究は、孤独が心の健康に与える影響の新しい側面を示しています。
従来は「孤独=ネガティブな気持ちが強い」という影響で理解されることが多かったのですが、今回の知見はその理由が「孤独=喜びが持続しない」という形で理解できることを示唆しています。