もしクモたちが本当にレム睡眠があるのならば、レム睡眠は想定されていたよりも遥かに広範な動物種に存在する、普遍的かつ古い起源を持つ現象である可能性があります。

研究者たちはクモたちを含む幅広い種でレム睡眠を研究することは、なぜレム睡眠や夢が存在するかといった、根源的な謎を解明する手助けになると述べています。

また生物哲学の分野に対しても、今回の発見は大きな衝撃となると考えられます。

サンフランシスコ州立大学の哲学者であるデビット・ペナ・グスマン氏は、「単純な夢でさえそれを経験する『私』のようなものなしに成立するとは想像しがたい。したがってクモが夢を見るとしたら、クモが最小限の自己のようなものをもっていることを意味するかもしれない」と述べています。

ただ最終的な結論を得るには、クモの脳に電極を刺し込み、レム睡眠時の特徴があらわれているかを証明する必要があるでしょう。

研究者たちは現在、より詳細な仮説の検証にとりかかっている、とのこと。

もしかしたら、研究者の暇つぶしからはじまった実験が、睡眠と夢の謎を解き明かす大発見につながるかもしれませんね。

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参考文献

Do spiders sleep? Study suggests they may snooze like humans
https://phys.org/news/2022-08-spiders-snooze-humans.html

元論文

Regularly occurring bouts of retinal movements suggest an REM sleep–like state in jumping spiders
https://www.pnas.org/doi/full/10.1073/pnas.2204754119

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。