眠りながら足をけいれんさせるクモをみたレスラー氏は、すぐに犬や猫の睡眠を思い出しました。
犬や猫も眠っているときに、周期的に手足をバタつかせることを知っていたからです。
この周期的な手足のばたつきは、体の筋肉が弛緩しているときに脳の一部が活性化するレム睡眠の代表的な現象でした。
そこでレスラー氏は、クモにもレム睡眠が存在し、レム睡眠時には人間や犬や猫と同じく夢をみている可能性があると仮説を立てました。
そして仮説を補強するために、クモの赤ちゃんの網膜を観察することにしました。
レム睡眠時のもう1つの特徴として、眼球の急速な運動が知られています。
この急速な眼球運動は、夢をみている間の視覚的な反応だと考えられています。
クモには人間のような眼球はありませんが、網膜を動かすことで視界をコントロールすることができます。
またクモの赤ちゃんの外骨格は透き通っているため、網膜の動きを観察することが容易でした。
結果、睡眠中の赤ちゃんクモの網膜は足の動きと連動して、激しく動き回ることが判明します。
これらの結果は、クモにも人間と同じようなレム睡眠が存在し、視覚をともなった夢をみている可能性を示します。
レスラー氏は興奮のあまり眠りにつけず、一晩中クモのレム睡眠のような動きを観察していたと述べています。
しかし、クモにレム睡眠が確認できたことがなぜ、そんなに重要だったのでしょうか?
夢をみるクモには最小限の自己認識能力があるかもしれない

なぜクモのレム睡眠が重要なのか?
これまでの研究により、人間を含む哺乳類や鳥類、爬虫類、魚類、イカやタコのような軟体動物にもレム睡眠に類似する状態が存在している可能性が報告されています。
しかし昆虫やクモ類などの節足動物においてレム睡眠に相当する現象がみられたという研究報告は世界ではじめてです。