令和6年9月、企業会計基準委員会(ASBJ)が新リース会計基準を公表しました。
この中で、貸手のオペレーティング・リースについて重要な定めが置かれています。
その適用指針82では、令和9年4月1日以後に開始される事業年度から、「貸手のリース期間に無償賃貸期間が含まれるときは、貸手は、契約期間における使用料の総額について契約期間にわたり計上する」とされました。
この定めは、会計上はフリーレント期間があっても、契約期間全体で使用料総額を期間按分して収益計上することを求めています。
つまり、会計上は前述の②の方法による処理が求められることになったのです。
税務と会計の調和を図る必要性
会計基準でこのような定めが置かれたことにより、税務上の処理についても会計処理との調和を図る必要が生じました。
会計と税務で処理方法が大きく異なると、申告調整が複雑になり、実務上の負担が増大するからです。
また、新リース会計基準は上場企業等では強制適用となるため、これらの企業においては会計上②の方法による処理が必須となります。
もし、税務上、①の方法しか認められないとすると、毎年両者の差異を埋めるための申告調整が必要になります。
「フリーレント通達」法人税基本通達12の5-3-2の新設
このような状況を受けて、国税庁は法人税基本通達12の5-3-2「無償等賃借期間を含む賃貸借取引に係る支払額の損金算入」を新設しました。
この通達では、フリーレント期間が定められた賃貸借契約について、一定の要件を満たす場合には、損金経理を要件として、賃料総額を賃借期間で按分した金額を各事業年度に損金算入することができると定められています。
ここでいう「損金経理」というのは、会計上も賃料総額を期間按分して費用計上しているということです。
つまり、会計上、このフリーレント期間での家賃の”前倒し計上”をしていないのに、税務申告のみで課税所得の減算はできないということです。
適用要件と除外規定