5. タイヤ屋が作ったゴム飛行機「インフラトプレーン」 (1956年)

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(画像=Public Domain,Link)

 もしパイロットが敵地のど真ん中に不時着したら? タイヤメーカーのグッドイヤー社は、その答えとして「空気で膨らむ飛行機」を提案した。

 その名も「インフラトプレーン」。これは文字通り、ゴム複合材で作られた空気注入式の飛行機だ。コンパクトな箱にポンプやエンジンと共に収納されており、パイロットはこれを膨らませて敵地から脱出するという、驚きの救出プランだった。

 アイデア自体は悪くない。しかし、軍がその実用性を冷静に検討した結果、不採用となった。考えてもみてほしい。敵地の真っ只中から、脆弱なゴム風船のような飛行機で、誰かが穴を開けずに無事に帰還できるわけがないのだ。

6. “空飛ぶジープ”「VZ-7」 (1958年)

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(画像=US Government, パブリック・ドメイン,リンクによる)

 第二次世界大戦で大活躍したジープ。米陸軍は、その役割を空でも担える航空機を夢想した。その結果生まれたのが、このカーチス・ライトVZ-7、「フライング・ジープ」である。もはや飛行機なのかヘリコプターなのか、あるいは全く別の何かかすら分からない。

 確かなのは、これが有用でも実用的でもなかったということだ。騒音はひどく、操縦は難しく、そして何より、パイロットは風雨や敵の銃弾に完全に無防備だった。陸軍がこの計画を即座に葬り去ったのは言うまでもない。

7. 米軍が本気で作った“空飛ぶ円盤”「アブロカー」 (1958年)

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(画像=Photo by Bzuk(パブリック・ドメイン)リンク)

 冷戦時代、米軍は数々の奇妙な秘密計画を進めていた。その一つが、このアブロ・カナダVZ-9、「アブロカー」だ。これは、まさしく空飛ぶ円盤そのものである。

 円盤状の機体から排気を噴出し、浮上と推進を行うという設計思想。当初の計画では、超高速で機動性に優れた戦闘機になるはずだった。

 しかし、現実は非情だった。アブロカーは極端に不安定で、水平を保つことすら困難。前に進もうとすれば、カタツムリのような速度で這うのがやっとで、少しでもスピードを出すと転倒した。おまけに、噴出する排気ガスはあまりにも高温で、試作機は自らの部品を溶かしてしまった。やはり、空飛ぶ円盤はSF映画の中だけにしておくのが一番、ということである。

 これらの奇妙な飛行機たちは、夢見る設計者たちの壮大な失敗の記念碑であり、「空を飛ぶ」ということが、我々が思うよりずっと難しいということを、身をもって教えてくれる愛すべき鉄くずたちなのである。

参考:Oddee、ほか

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