このアメーバによる感染症は原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)と呼ばれ、発症すると急速に脳が腫れ上がり、強烈な頭痛、発熱、幻覚、錯乱、さらには昏睡状態へと至ります。
そしてそのほとんどが、7〜10日以内に死亡するという極めて致命的な経過を辿ります。
アメリカのCDC(疾病予防管理センター)によると、1962年から2024年までの間に167件の感染が報告されています。
致死率はおよそ97%とされ、世界でも最も致命的な感染症のひとつです。
このように、「脳食いアメーバ」は特定の地域に限定されず、世界中の温かい淡水環境に存在するのです。
そして今回、オーストラリアの“安全なはずの水道水”から検出されたことにより、この脅威はさらなる注目を集めています。
オーストラリアの水道水から「脳食いアメーバ」が検出される
事の発端は、クイーンズランド州のチャーリービル(Charleville)とオーガテラ(Augathella)という2つの小さな町でした。
クイーンズランド州マーウェ・シャイア(Murweh Shire)が水道水の品質調査を行う中で、フォーラーネグレリアが水道水から検出されたのです。
この調査はクイーンズランド州保健省(Queensland Health)が、地元の大学と共同で進めていた包括的な水質評価プロジェクトの一環でした。
通常、フォーラーネグレリアは塩素処理で不活性化されるとされていますが、処理の不完全さや水温の条件によっては生存している可能性もあります。
今回の検出はそのリスクを示す実例となりました。

これに対し、クイーンズランド州保健当局は「鼻に水を入れない限り、感染のリスクは極めて低い」としつつも、顔を洗う際やシャワーの際は水が鼻に入らないよう注意するよう警告を出しました。
また、子どもがホースやスプリンクラーで遊ぶ際にも水を鼻に入れないよう、保護者に監督を求める声明も出されています。