「安全だと思っていた水道水を利用して死ぬ」

そんな恐ろしい結果を連想させる出来事がオーストラリアで起こりました。

2025年8月、オーストラリアのクイーンズランド州で、致死率97%を誇る「脳食いアメーバ」ことフォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)が水道水から検出されたという発表がありました。

水道水からの検出という極めて稀なケースで、地域住民に衝撃が走っています。

このアメーバはどこにでもいるような水に潜み、私たちの命をあっという間に奪っていくのです。

目次

  • 「脳食いアメーバ」とは?感染するとどうなる?
  • オーストラリアの水道水から「脳食いアメーバ」が検出される

「脳食いアメーバ」とは?感染するとどうなる?

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フォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)。左から右へと変化していく / Credit:Wikipedia Commons

「脳を食べるアメーバ」と聞くと、まるでホラー映画のように思えるかもしれません。

しかしそれは架空の存在ではなく、実在する微生物なのです。

この生物の正式名称はフォーラーネグレリア(Naegleria fowleri)

原生生物に分類されるアメーバの一種で、ふだんは温かい淡水や湿った土壌に静かに存在しています。

彼らの主な目的は“脳を食べること”ではありません。

本来は細菌を餌として生きており、人間を狙う意図はありません。

しかし、偶然に人間の鼻腔に入り込んでしまうと話は別です。

フォーラーネグレリアは、鼻から侵入し、神経を経由しながら脳内に入り込むと考えられています。

そして一旦脳に入ると、神経細胞やグリア細胞にまとわりつき、酵素で細胞膜を溶かしたうえで、細胞ごと取り込んで分解します。

“食べる”という表現がまさに当てはまる恐ろしいプロセスであり、これが「脳食いアメーバ」と呼ばれる所以です。

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原発性アメーバ性髄膜脳炎(PAM)では、強烈な頭痛を経験し、そのほとんどで10日以内に死亡する / Credit:Canva