「植物エキスと乳酸菌を混ぜたものが、がん細胞を殺す」というと、これまではにわかに信じない人も多かったでしょう。
がん細胞と戦うには副作用の強い薬や放射線治療が必要で、植物エキス+乳酸菌のようなソフトなイメージのものは溺れる人が掴む最後の藁のような印象が強かったからです。
しかし今回の研究によって、「甘味料ステビアを特定の乳酸菌で発酵させると、がん細胞だけを選んで攻撃できる強力な抗がん物質が生まれる可能性」が示されました。
特に今回注目された膵臓がんは、早期発見が非常に難しく、手術や既存の抗がん剤による治療効果も限定的という現状があります。
このため、膵臓がんに対する効果的な新薬や治療法は、医療現場でも強く求められています。
今回の発酵ステビアエキス(FSLE)が示した正常な細胞にはほとんどダメージを与えず「がん細胞を選択的に狙い撃ちする」効果は、まさにそうした治療の理想的な条件を満たしています。
というのも現在使われている抗がん剤の多くは、がん細胞だけでなく健康な細胞にもダメージを与えてしまうため、患者の負担がとても大きくなっています。
そのため、「がん細胞だけを選び、正常細胞を守る薬」は、がん患者にとって非常に望ましいものです。
今回の研究でステビアから得られた発酵エキス(FSLE)は、まさにこうした理想的な性質を持っていることが明らかになりました。
しかし、現時点ではまだ研究室で培養した細胞での結果に過ぎません。
今後、マウスなどの動物実験を通じて、実際に生き物の体内で同じ効果が得られるのか、副作用はないのか、どのくらいの量で効果が現れるのかなど、さらに詳しい検討が必要になります。
研究チームはすでに動物モデルを用いた実験を計画しており、その結果によって、この発酵ステビアエキスが現実の医療にどれほど近づけるかが明らかになるでしょう。
さらに今回の研究で注目したいのは、「乳酸菌による発酵」という手法そのものです。