例えば、古い標本からペストやコレラといった歴史的な大流行の原因菌やウイルスの遺伝情報を取り出すことも現実的な目標となったのです。

この技術は、将来的に多くの過去の感染症の謎を解き明かし、その感染症がなぜ人間社会に甚大な影響を与えたのかを科学的に明らかにする手段を提供します。

過去のパンデミック研究が教えてくれるのは、ウイルスや病原菌が人間にどのように適応し、どのように変化していくかという進化のダイナミクスです。

私たちが直面した新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックも、まさにこうした進化のプロセスの一例です。

今回の研究の成果を受けて、過去と現在をつなぐ視点を持つことで、未来のパンデミックへの準備をより一層強化することができるでしょう。

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元論文

An ancient influenza genome from Switzerland allows deeper insights into host adaptation during the 1918 flu pandemic in Europe
https://doi.org/10.1186/s12915-025-02282-z

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部