この違いは、男女それぞれが直面してきた進化上の課題の違い(妊娠リスクや子育て投資の差など)による性特異的な進化圧を反映していると考えられます。
もちろん、今回の研究結果は「女性は魅力的な相手にドキドキすると創造性が下がる」と単純化して断言できるものではありません。
研究手法にも限界があります。
例えば実験1では予想に反して写真の魅力度による差が出ませんでしたが、これについて研究者らは「魅力的な異性に評価されるストレス」や「写真だけでは現実感が乏しい」ことなど複数の要因を挙げています。
実際、写真だけの閲覧と違い直接会って会話すれば、相手のしぐさや声、匂いなど様々な刺激が加わって創造性にも一層影響を与える可能性があります。
今後は実験環境をさらに現実の出会いに近づけたり、参加者をより多様な地域・背景から募ったりすることで、恋愛文脈での創造性の役割を長期的に追跡する研究が望まれます。
それでも本研究は、創造性という人類の高次な認知能力が恋愛という文脈で微妙に揺れ動く様子を捉えた点で興味深い意義を持ちます。
現代のオンラインデートにおいても、ユニークな自己紹介やウィットに富んだメッセージは相手の心をつかむ重要な手段です。
恋と創造力の絡み合いという、一見無関係に思える要素同士が影響し合う様を解明した本研究は、私たちの進化の歴史が現代の恋愛行動やクリエイティブな表現にまで影響を及ぼしていることを示唆しています。
今後さらなる研究が進めば、恋における創造性の活用法や、男女の感じ方の違いへの理解が深まり、より豊かな人間関係を築くヒントが得られるかもしれません。
全ての画像を見る
元論文
The Influence of Mating Context on Creativity: Insights from Simulated Dating Scenarios
https://doi.org/10.1177/14747049251337983