例えば上の画像にあるように、ある絵画に対して、自分の意見(絵画に対する評価)が「100点中70点」だとします。

相手の好み(絵画に対する評価)が80点であれば、点数が近いので、この意見は有益であり、「正確に相手の好みを予測できていた」と言えます。

逆に受け手の好みが20点であれば、点数が大きく離れているので、この意見は有益ではなかったと言えます。

疑似的な集合知についても、次の画像のように、その有益性が評価されます。

「疑似的な集合知」の算出方法。他の意見と有益性を比較できる
「疑似的な集合知」の算出方法。他の意見と有益性を比較できる / Credit:藤崎 樹(東京大学)_他者の好みに関して有益な意見を伝えるシンプルな方法〜集合知にヒントを得た、一人集合知を生み出す手法~(2022)(PDF)

「自分自身の好み」が20点、「世間一般の好み」を80点とした場合、2つを平均化することで50点になり、この意見が「相手の好み」と比較されるのです。

そして実験の結果、「自分自身の好み」や「想像した世間一般の好み」のどちらか一方だけの場合よりも、両者を平均化した「疑似的な集合知」の方が、受け手の好みを正確に予測できると判明。

さらに、①自分自身の好みが平均から離れている場合、②自分と相手の好みが異なっている場合、③対象(絵画や楽曲など)の好き嫌いが判断しやすい場合には、この方法がより効果的だと分かりました。

この結果から、自分1人の考えであっても、想像した世間の好みという擬似的な集合知を利用することで、相手の好みに近い回答ができると分かりました。

しかもこの方法は、「好み」などの正解がはっきりしない場合にも役立つのです。

研究チームは、今回の発見がレビューサイトの設計にも応用でき、少数の評価しかない場合でも有益性を高められると考えています。

研究者が提案した方法は、相手の好みに近い答えをするおしゃべりが上手な人は、無意識に利用しているのかもしれません。