ウシの体重ならば、厳密な1つの正解がありますが、「好み」は人によって大きく異なります。
また、仮に集合知が「好み」にも役立つとしても、相手に尋ねられてから、①何百人もの人からアンケートを集めて、②平均値を出して、③答えてあげる、ことなどできません。
集合知は、日常的には利用しづらいのです。
そこで研究チームは、たった1人しかいなくても、一種の集合知を生み出す方法を考案し、その方法がどれほど効果的か確かめることにしました。
1人で「疑似的な集合知」を生み出すことで相手の好みに近い回答を作り出せる

研究チームが提案した方法とは、「自分自身の好み」と、自分が想像する「世間一般の好み」を組み合わせて平均化することで、疑似的な集合知を生み出すというもの。
この「世間一般の好み」とは、データを集めたものではなく、当人が勝手に想像しただけのものです。
人は「世間一般の人」を自分とは異なる存在として捉える傾向があるため、「世間一般の好み」を想像すると、それが「別人のような評価」を生み出します。
これにより、自分1人だけで「疑似的な大勢の意見」を生み出すことができ、偏った回答をさけることができる、というのです。
そしてこれによって導き出された答えが、相手の好みに近いものとなるか(有益かどうか)、実験によって確かめました。
実験では、参加者たちに、ある絵画と楽曲に対して、「自分自身の好み」と「世間一般の好み」を回答してもらいました。
次に得られたデータから、意見の「与え手(自分)」と「受け手(相手)」を選出。
与え手の「自分自身の好み」や算出した「疑似的な集合知」が、受け手の好みをどの程度正確に予測できるか調べました。
