これらの小胞同士や細胞本体とは、クモの巣のように非常に細い繊維でつながっていました。
さらに細胞内部には、幅が約4.5nm(ナノメートル、10億分の1メートル)の非常に細い糸状の構造(フィラメント)が観察されました。
真核生物が持つ「アクチン」と似たフィラメントは見られませんでしたが、細胞骨格(細胞を支える骨組み)を作るタンパク質である「チューブリン」の遺伝子は持っていました。
この遺伝子が古細菌の中でどのような働きをしているのかは、今後の研究で明らかになるかもしれません。
このような細胞内部の構造は、真核生物(ヒトや動植物のような複雑な生き物)の細胞構造と似ている部分があり、進化の過程を探る上でとても興味深い発見です。
一方、細菌側の細胞にも重要な特徴がありました。
細菌から古細菌に向かって、ナノメートル単位の非常に細いチューブが伸びていて、古細菌の細胞や突起に直接つながっていました。
まさに「糸電話」のように細菌が古細菌にチューブを伸ばし、両者が直接つながっているのです。
さらに詳しく調べると、このチューブの付け根には膜を貫くタンパク質複合体が見え、細菌が組み立てたナノチューブで古細菌に接続していると考えられます。
つまり、細菌が自分から古細菌に向かって「ホース」を伸ばすように、積極的につながっているのです。
ゲノム解析(遺伝子を調べること)の結果から、この古細菌と細菌はお互いに役割分担をしていることも判明しました。
古細菌は栄養を分解してエネルギーを作る際に、水素ガスや酢酸、ギ酸などを副産物として作ることができます。
一方で細菌はこれらを利用して成長することができ、さらに古細菌が自分で作れないビタミンやアミノ酸を合成できます。
このため細菌は古細菌にとって栄養を供給する役割を果たしている可能性があります。
こうして、古細菌がエネルギーを作って細菌に渡し、細菌が栄養を作って古細菌に渡すという、お互いが得意分野を活かしあった関係が生まれていると考えられます。