数万人のロシア兵が同じ状況にあるという。プーチン大統領のウクライナ侵攻から3年以上が経った今でも、多くのロシア男性が自発的にウクライナとの戦争に参加している。プーチン大統領自身によると、毎月少なくとも5万人が軍と契約を結んでいるという。

西側諸国の推計によると、これまでに約100万人のロシア兵が負傷または死亡している。軍指揮官たちは、兵士を使い捨ての消耗品のように扱っている。「非人道的な波状攻撃では、わずか数メートルの前進のために容赦なく焼き尽くされる。多くは、一発も発砲できないうちにドローンによってバラバラに引き裂かれる。前進を拒否すれば、同志から虐待、拷問、あるいは処刑される。軍幹部たちは兵士の生死など気にしていなかった」(WSJ)という。

問題は、なぜ多くのロシア男性が軍に入ろうとするかだ。フォーゲル記者は「プーチン大統領の戦争経済では多くの人にとって生きるよりも死ぬ方が価値があるからだ。ロシアには死を覚悟する何百万人の国民がいる」という。

ロシアの哲学者ニコライ・カルピツキー氏は「「仕事がない、あるいは低賃金、家庭での喧嘩や悩みが絶えない、社会で孤立している」――このような社会では、自己保存本能が薄れ、死はもはや悪とは思わなくなる。ロシアにはそのような人が何百万人もいる。だから、軍に入る男性が止まらないのだ」と説明している。

モスクワの軍の募集事務所は契約兵の募集を宣伝している。初年度の「保証収入」は520万ルーブルからで、ロシアの公式平均給与の約55倍に相当する。募集ボーナスだけでも約2万5000ユーロだ。これに加えて、託児所の予約、子ども一人につき月200ユーロ以上の小遣い、配偶者向けの無料の職業訓練、両親の介護支援などが含まれる。モスクワ行きの航空券まで支給される。父親や夫が死亡した場合、親族には数万ユーロが支払われる、といった具合だ。

この残酷な論理は、歪んだ帰結をもたらす。ロシア人の命があまりにも使い捨てになっているのだ。ロシアの軍事機構が活況を呈しているのは、最も重要な原材料((兵士)が極めて安価だからだ。一方、死の見通しは、貧困生活の見通しよりも悪くないように見えだすのだ。プーチン帝国が変わらない限り、そのような状況は続くという。