これらは理論の「分率は D だけで決まり、捕捉や側帯の有無には依らない」という帰結と整合する。
自由空間での時間発展については、格子から解放されたガウス波束のrms半径 x(t) = x0 sqrt(1 + (ω t)^2) に対し
D(t) = exp( – Q^2 x(t)^2 )
と減衰し、十分長い time-of-flight では D → 0、したがって f_incoh → 1 に近づく。
Li と Dy の比較では、Dy 系で高い時間分解能の下、格子オフ直後の抑制がオン時と同一であること、および二つの捕捉周波数(例:2π×21 kHz, 2π×43 kHz)での f_incoh(t) がガウス波束の拡散モデルと定量的に整合することが示された。
なお実データの正規化は長時間極限で D<0.01 を満たす条件で f_incoh → 1となるように取られている。
which-way 情報の生成機構は、長パルス in-trapでは励起調和振動子状態への遷移確率(Fermi の黄金律)で直接読み出され、短パルスでは運動量シフトを受けたモーメンタムずらし波束の生成として理解される。
自由空間での which-way の定量化に向け、照射直後に調和ポテンシャルを急投入して占有分布を読めば、エンタングルメントに由来するwhich-way情報(=コヒーレント分率)を投影的に計測できる実験プロトコルも提案されている。
加えて、コヒーレント分率 D は運動量幅に依存せず、空間幅 x0 のみで決まるという一般化が与えられ、その数学的理由は「運動量シフトの生成子が位置演算子である」ことに求められる。
以上より、本研究は「I(Q) = D · S(Q) + (1-D)」という測定可能な形で干渉の可視度を D に因果帰着し、実験的には捕捉の有無・側帯分解の有無・周波数(担体線 vs 同一周波数の散乱)といった装置要素から一般則を切り離して検証した点に本質がある。
結果は、単一不確定性限界波束の散乱において、インコヒーレント散乱は空間的非局在化(= D の低下)に等価であり、その源はエンタングルメントであるという量子記述と首尾一貫している。