このとき

D ≡ |<β|0>|^2 = | < exp(i Q·R) > |^2 = exp( – η^2 ),   η ≡ Q x0 ,

で定義されるDebye–Waller 因子 Dコヒーレント分率を与え、インコヒーレント分率は f_incoh = 1 – D となる。

2原子の場合、コヒーレントな干渉項の光子数は |ε|^2 D |γ1+γ2|^2、インコヒーレントは 2 |ε|^2 (1-D) で与えられる(単一原子ならそれぞれ |ε|^2 D と |ε|^2 (1-D))。これらは格子の有無(捕捉ポテンシャルの存在)に依存しない一般則として導かれ、モスバウアー的な担体線・側帯の分離や再加熱の有無は分率の決定因子ではない

物理的本質は光と原子の部分的エンタングルメントであり、古典的振動子アレイの散乱(純コヒーレント)とは本質的に異なる。

実験は、Li-7 と Dy-162 で単一占有の Mott 絶縁相を形成し(それぞれ ~3×10^4 原子規模)、Bragg 角から外れた散乱角で検出することにより、測定強度

I(Q) = D · S(Q) + f_incoh

の形で構造因子 S(Q)インコヒーレント分 f_incohを分離できる配置を採用した。格子スイッチオフは 0.1 μs 程度で行い、プローブは FWHM 0.1 μs の短パルス(または 4 μs の長パルス)を用いた。

主要結果は三点に要約できる。第一に、格子オン直前とオフ直後での散乱強度 I は実験誤差内で同一であり、コヒーレント/インコヒーレント分率が捕捉の有無に依存しないことを実証した(“trap-free” と“in-trap”の等価性)。

第二に、側帯が分解される長パルス分解されない短パルスで I は同程度(例:0.48±0.04 vs 0.52±0.04)であり、側帯分解の有無はコヒーレンス特性に影響しない。第三に、コヒーレント光とインコヒーレント光が同一周波数を共有しうることを実測で確認した。