投与後については、約45分後の尿から、このタンパク質がCOを抱えたまま排出されていることが確かめられました。
体に長く残りにくい点も安心材料になります。
救急車で投与できる「真の解毒剤」になるかも

もしこの解毒剤候補が人でも安全かつ有効だと確かめられれば、医療の現場は大きく変わります。
救急車に常備して現場で投与すれば、病院に着く前から血液の「浄化」を始められる可能性があるのです。
その結果、火災事故などでも現場で一酸化炭素中毒の治療を実施でき、後遺症のリスクを下げ、助かる命を増やせるかもしれません。
一方で、現時点のデータは動物実験での成果であり、人で同じ効果と安全性が得られるかは慎重に確認する必要があります。
必要な投与量、投与のタイミング、繰り返し使った場合の影響など、臨床試験で解くべき課題は多く残っています。
それでも「短時間で血液から一酸化炭素を抜く」というコンセプトは、従来の酸素で時間を掛けてCOを押し出すという“一酸化炭素中毒治療”の限界を補う新しい発想です。
一酸化炭素中毒は、家庭の事故から火災や災害時まで、誰にとっても身近なリスクです。
RcoM-HBD-CCCという小さなタンパク質の掃除屋は、その見えない脅威に対して、本格的な解毒剤の有力候補となり得る力を示しました。
実用化までには検証が必要ですが、救急の現場で命と生活の質を守る、新しい選択肢が見えてきたと言えるでしょう。
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参考文献
New Protein Therapy Shows Promise as First-Ever Antidote for Carbon Monoxide Poisoning
https://www.medschool.umaryland.edu/news/2025/new-protein-therapy-shows-promise-as-first-ever-antidote-for-carbon-monoxide-poisoning.html