そして汗などで湿ってくると、内部のシートが水分を吸ってまっすぐな状態に戻り、ジャケット生地全体がが平らになって薄くなります。
そのぶん、体の熱が外へ逃げやすくなります。
ふつうの材料は「ぬれるともっと曲がる」ものが多いのですが、このシートの材料は「ぬれると平らになる」ように作られているのがポイントです。
では、この新しいジャケットにはどれほどの断熱・放熱効果があるのでしょうか。
新ジャケットは厚さが2m→13mに変動!体温調節能力が82.8%も向上
新ジャケットは、乾燥時は約13mmの“ふくらみ”で断熱し、発汗などで湿度が高いときは約2mmまで薄くなります。
模擬皮膚と熱流束計を用いた試験や、実際にジャケットを着て、人間が歩行したり自転車走行したりする試験も行われました。
その結果、乾燥時は市販のダウン(約13mm)に近い断熱性を示し、湿潤時は薄手のポリエステルシャツ(約1.4mm)に近い放熱性へと一着の中で切り替わりました。
従来の一定厚みの防寒着と比べて、体温調節能力が最大で82.8%向上したと報告されています。
さらに、湿潤/乾燥の繰り返しが200回でも性能の劣化は小さく、透湿性(蒸れにくさ)を保ったまま、20回の水洗い後も動作しました。

では、この新しいジャケットはどんな人に向いているのでしょうか。
「動くと暑く、止まると冷える」という状況を繰り返す人に特に向いています。
清掃員、宅配業者、警察官などの屋外作業員は、脱ぎ着の手間を減らしながら、より快適に過ごせる可能性があります。
一方で、今後の実用化に向けて確かめるべき点もあります。
年単位の長期使用での機械的な疲労や、豪雨や完全浸水のような極端な条件、強風下や厳しい寒波での実地体感などは、これから検証を重ねる必要があるでしょう。