他国に目を移すとまったく違った状況だ。たとえば中国では現在、歴史的に類を見ない就職氷河期となっており、欧米や国内のトップ校を出たエリート層がノンスキルワークへ応募をしても落ちてしまう状況が続いている。熾烈な競争の勝ち組でも就職できない極めて厳しい状況だ。
これは以前の記事でも取り上げたことがあったが、ある中国の富裕層は日本に家族ごと移住する理由について「日本は競争がイージーだから人間らしい生活を送れる」と述べた。
実際、自分の子供たちは国立、私大のトップ校の医学部や法学部を出て日本でハイクラスの仕事に就職している。彼らは「日本でのんびり生活を楽しむ」といいながら、平均的な日本人の数倍努力をしていることは明らかだった。努力の基準値がまったく違うのだろう。
やりたいことの欠如
3つ目、本当にやりたいことや自己実現の目標を持つ人間が減ったのだろうと思う。
仕事が自分ごとになれば、やりがいの有無にかかわらず自分事として全力を尽くす。筆者は独立を決めてから、お正月や平日週末関係なく空き時間のすべてをビジネスに捧げ、そして脱サラした。会社員でも昇進やキャリアデザインを真剣に考えている人は喜んで働く。
これは日本人が「やりたいことがない」ということなのだろうか?否、筆者は日本の雇用制度に理由があると思っている。日本では長きにわたり、とりあえず大学へいき、みんな同じタイミングで就職をする。いざ就職をすると「こんなはずではなかった」とミスマッチで早期退職ということが起き得る。
最近だと「頑張らない働き方」があたかも存在するような認識が広がっており、静かな退職などの動きにつながっている。だが、この現象はもって数年だろう。国際競争やAIの台頭、法規制の変更が起きれば一夜にして状況は一変するからだ。
また程度の差こそあれ、どの国でも似たようなことは起こりやすいものの、違った状況の国家も存在する。国の中では大学入学時点で強く就職を意識して専攻を選び、インターンシップを「長い面接」のような感覚で応募し、職場とのミスマッチ回避に努めて就職をするというところがある。大学の専攻科目の時点で就職する分野に直結するため、彼らは自分でキャリアデザインをし、人生がかかっているのでとても真剣だ。