さらに、この効果は他の運動習慣がある人にも当てはまりました。

スポーツやジム通いをしている人でも、日常生活に速歩きを加えると、さらに死亡リスクが下がっていました。逆に、速歩きの習慣がある人では、遅歩きの時間を増やしても追加の効果はほとんど見られませんでした。

なぜ速歩きがこれほど効果的なのでしょうか?

考えられる理由のひとつは、速歩きが有酸素運動として心臓や血管に適度な負荷を与えることです。これにより心臓のポンプ機能や血流が改善され、血圧や血糖値、血中脂質など、生活習慣病に関わる数値が整いやすくなります。また、速歩きは短時間でも心拍数を上げられるため、効率よく全身の代謝を高められるというメリットもあります。

この結果から、「とにかく歩けば健康になる」という考え方は、少し修正が必要であることがわかります。

体力や関節の状態によって速歩きが難しい人もいますが、その場合でもできる範囲で少しペースを上げることが、健康効果を高めるポイントになるでしょう。研究チームも、歩く速さを意識することが健康格差の解消につながり得ると指摘しています。

特別な器具や場所は必要なく、日常生活にすぐに取り入れられる速歩きは、誰でも実践できるシンプルで効果的な習慣です。

15分からでいいというのは無理のない運動をしたいという人には有益な情報になるかもしれません。また60分以上は効果が見られないという点からも、ウォーキングで無理をする必要はないと考えられます。

もちろん、これはあくまで統計調査の結果であり、具体的な歩行速度などもまだ調査されていません。この点は今後の研究課題となるでしょう。

とはいえ、この研究が教えてくれるのは「時間がなくても、短時間でしっかり効果を出す方法がある」ということです。

日々の通勤や買い物の途中、あるいは昼休みの散歩でも、呼吸が弾むくらいの速さを意識するだけで、十分な健康効果を得られる可能性があるのです。