朝ドラの現場で感じる、時代の移り変わり
——馬渡さんは、NHK連続テレビ小説『おむすび』の葬儀のシーンで作法の指導を担当されましたよね。印象的だったことはありますか?
はい、橋本環奈さん演じる主人公の祖父役を松平健さんが演じており、そのお通夜や葬儀のシーンで取材協力や撮影の立ち会いを行いました。
打ち合わせの段階でスタッフの方に「法名(戒名)がおかしくないか」などの質問を受けるなど、細部へのこだわりを感じることが多かったですね。
そしてやはり、現在我々が多く担当する葬儀とは、異なる部分が多くあると感じました。
——時代背景としては平成の、阪神淡路大震災の少しあとですよね。
そうですね。比較的、新しい時代を取り扱った朝ドラではあるものの、時代設定は十数年前です。現在のような家族葬ではなく、「顔が広い人物が亡くなった際の、中規模程度の葬儀のイメージ」と伝えられました。
「そういえば十数年前まではこうだったな」と思い出しましたね。
お通夜が終わったあとのシーンでは、人が入れ替わり立ち替わり故人に会いにくるのですが、現在ではお通夜後にそのような様子はあまり見受けられません。
また、関西地方などでは現在、「香典辞退」のケースが増えてきました。お香典のやり取りのシーンなどにも、逆に新鮮さを感じました。
目の前の葬儀単価ではなく、未来の顧客を見据えたサポートを
——葬儀に対する考え方の変化を受けて、市場や葬儀社の動きにも変化はあるのでしょうか?
市場としては2040年が死亡者数のピークだといわれています。2040年に向けて葬儀の件数は増えていく一方、葬儀1件あたりの単価は下がってきています。葬儀社がビジネスとして経営を維持していくためには、限りある件数をどう確保していくかが課題になるのです。
そのため、家族葬をお手伝いできる、という部分を大きくプロモーションに取り入れている葬儀社が多いですね。とくに、ここ十数年で業界に参入してきた葬儀社は、Web広告での集客にも力を入れている印象です。
弊社も、家族葬をアピールするプロモーションのほか、イベントなどで認知を広げていく活動を行っています。
また、弊社は100年近い歴史があることで、宗教関連の方やお客様からのご紹介なども多いです。我々はこの部分をとても大事にしています。
葬儀の喪主の方、参列している方々も将来のお客様になりうると考えているため、1件あたりの単価をいかに上げるかよりも、誠心誠意寄り添って「次も頼みたい」「誰かにすすめたい」と感じていただけるようにお手伝いすることもプロモーションの一端になるのではと考えています。
——日々、そのような気持ちでお客様と向き合っている馬渡さんが、葬儀や事前相談の際に大切にしていることはありますか?
とにかく、細かい部分まで説明を欠かさないことです。
家族葬が増えたことで、自分自身が葬儀に参列したことがないという人が増えています。さらに、「なぜこれをするのか?」を当たり前に教えてくれる親戚の参列も減少していることで、葬儀社側がしっかり説明を行わないと金額や行動に納得感が得られないのです。
ただ葬儀をお手伝いするだけではなく、「なぜお布施にこれだけの金額を出さなければいけないのか」「お通夜と葬儀を別で行うのはなぜか」など、多くの方々が疑問に思う部分をしっかりと解消できる、コンサルタント的な役割も果たしていかなければと思っています。
