GDPあたりの損失が減った理由は、天気予報・警報などが発達したこと、ダム・堤防や建築などのインフラが整備されたこと、経済が多角化して災害に脆弱な農業などのGDPシェアが減ったことだ。つまりは技術進歩と経済成長のお陰である。人災も大幅に減少した。
地球温暖化によって熱中症などによる暑さ関連の死亡が増加するということもよく言われているが、実際には寒さ関連の死亡の方が遥かに多い。
図10.2は、Gasparini et al.(2015)の分析結果を国別に見た分布を示しています。米国では、死亡原因の温度要因の割合は5.9%で、そのうち5.5%が寒さによるものでした。つまり、寒さは暑さの14倍の人命を奪いました。

図10.2 極端な寒さと暑さによる死亡率の割合(国別)出典:Gasparini et al.(2015)より再掲
したがって地球温暖化はむしろ死亡リスクを下げることになる。
だがIPCCは暑さによる死亡リスクばかりを強調してきた。
IPCCはAR6統合報告書において、全体的な状況を誤って説明しています。同報告書の第A.2.5節では次のように述べています:「すべての地域において、極端な熱波の増加は人間の死亡率と罹患率の増加を引き起こしています(非常に高い信頼度)」。しかし、極端な寒波における死亡率の全体的な減少については言及していません。
CWGは、暑さや寒さによる死亡率が米国において激減してきたことを紹介している。これは建築物が改善されたこと、エアコンが普及したことなどが理由である。そして、貧しい世帯は、厳しい暑さ・寒さになってもエアコンの使用を控える傾向にあるためリスクが高く、したがって安価なエネルギー供給こそが、貧しい人々の健康リスク回避のために重要であるとしている。