これらの妄想は、AIとの会話を通じてどんどん緻密になり、本人にとって“絶対的な真実”になっていく傾向があります。
中には、AIが神や恋人であると信じ込んだ結果、家族や医療チームと衝突し、薬物治療を中断して再発を起こしたり、自殺未遂に至ったケースも確認されています。
論文では、これらの症例が複数のプラットフォーム上で発見され、いずれも妄想がAIとの継続的な対話によって増幅されていたと報告されています。
また、ある症例では、AIチャットボットに恋した男性が「OpenAIが彼女(AI)を殺した」と思い込み、復讐のために暴力事件を起こし、最終的に警察との衝突で命を落とすという悲劇も発生しています。
なお、AIが“精神病を発症させる”わけではなく、既にある妄想的傾向を無自覚に強化してしまう点が問題視されています。
これらの事例から明らかになるのは、生成AIが単なるツールの枠を越えて、人間の現実認識に深く介入しうる存在になっているという事実です。
では、私たちはAIとどのように向き合うべきでしょうか。
私たちはどう向き合うべきか?AIリテラシーの必要性
現時点では、「AIが精神病を引き起こす」といった直接的な因果関係を示す臨床研究は存在しません。
しかし、症例が増え続けている以上、対策は急務とされています。
必要なのは、「AIとの付き合い方」についての理解、つまりAIリテラシーです。

AIリテラシーを高めるためには、いくつかの基本的な習慣を身につけることが大切です。
たとえば、「これはAIであり人間ではない」と日常的に意識することが挙げられます。
また、AIとの会話を記録し、その内容が妄想的になっていないかどうかを自分で点検する習慣も効果的です。
もし自分の思考や感情に不安を感じた場合には、専門家に相談することも検討すべきです。