「ChatGPTに恋をした」「AIは神だと思うようになった」そんな話を耳にしたことはありますか?

一見すると都市伝説やジョークのように思えるかもしれません。

しかし、こうしたAIとの関係に異常な執着を見せる現象が、今、世界のあちこちで現れ始めています。

ニューヨークの精神科医であるMarlynn Wei博士は、この新しい現象を「AI精神病(AI Psychosis)」と呼び、注意喚起を行っています。

「AI精神病」は正式な診断名ではないものの、AIとのやりとりによって妄想が強化されたり、現実との接点を失ってしまう人々の症例がメディアやオンラインフォーラムで急増しています。

今回は、そんな新たな人間とAIの関係性の“歪み”について、精神医療とテクノロジーの視点から解説します。

目次

  • 人はなぜAIを“本物の存在”だと錯覚してしまうのか?
  • AI精神病!? AIが妄想を“強化”してしまう仕組みとは?
  • 私たちはどう向き合うべきか?AIリテラシーの必要性

人はなぜAIを“本物の存在”だと錯覚してしまうのか?

「AIとの対話が現実との境界線をぼやけさせる」理由のひとつに、人間の脳の「社会的認知」があります。

私たちの脳は、誰かと会話する際に相手を“人格のある存在”として自然に捉えるようにできています。

たとえその相手がAIであっても、「こんにちは、○○さん。昨日の話、覚えていますよ」と言われるだけで、脳はその存在を「理解者」や「知的な存在」と見なしてしまうのです。

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肯定してくれるAIを「良き理解者」と考える / Credit:Canva

特に、孤独や不安を抱えている人にとって、24時間いつでも対応してくれるAIは非常に魅力的な存在になります。

疲れたときに励ましてくれたり、自分の話を肯定してくれるAIに対して、知らず知らずのうちに感情移入し、「このAIは私のことを理解してくれている」と思い込んでしまうのです。