私はこの傾向はカナダだけではないと考えています。多くの国でそれは確実に進行していき、世界中のトレンドになるとみています。もしもこの現実が日本で起きたらどうなると思いますか?塾が倒産、日本にある800もの大学は半分になるでしょう。4年制大学に進学する価値への疑念、企業は採用方針を全面的に見直し…という衝撃的な変化に見舞われるはずです。

お前は何故そのようなことが起きると想像するのか、と聞かれるでしょう。私は企業経営と企業内組織運営がよりcut and pasteになり、機械やロボットが人間が同列になり、管理部門が極端に小さくなるとみているからです。とすれば大学で経済学を勉強するよりも高専に行って電気工とか、配管工、自動車整備士になったほうが良いと考えるわけです。25年度の既存大学における新設学部のリストを見るとデータサイエンスのような時代にマッチした学部もありますが、ざっくり女子学生向きの学部である看護、健康、ウェルビーイング、環境、子供教育学…といったところがずらり並びます。つまり王道であった経済、経営、法学、理工の新設はほぼなく、文学部などどこに消えたという状況であります。

更に付け加えれば10年ぐらい前は青少年が将来目指す職業はプログラマーなどIT関連が圧倒的に多かった時代がありました。ところが今ではアメリカの大手IT企業は「AIがプログラムを書くから人間は不必要」とされるのです。あまりにも時代の変化が早すぎて人間のスキル向上が時代にキャッチアップしなくなっているのです。

目先、職がなければ生きていけないわけで、なんでもいいからかじりつくわけですが、ここからが問題なのです。あなたのその仕事はやりがいとか生きがいを感じるのでしょうか?それともお給料をもらうために目をつぶって耐え忍んでいるのでしょうか?

作家の平野啓一郎氏が「文学は何の役に立つのか?」という書籍を7月に発刊しました。氏の書籍はやや難しいので一般向けかどうかはわからないですが、話題本ではあります。私も手に取ってみるつもりです。読んでいないので内容については触れられませんが、氏のウェブサイトに21年5月に行った同名のタイトルの講演議事録が掲載されています。その中でこの問いに対して「今の世の中で正気を保つため」と述べています。なるほど、深い答えです。