グリーンアンモニアの普及への課題
グリーンアンモニアの普及には課題がある。
「製造コストが高いです。2027年の先物の入札では、グリーンアンモニアの価格は現在流通してるアンモニアの3~4倍くらいとなっています。企業のなかには価格が3倍でもCO2排出に対するペナルティを考慮すれば採算が取れると考えるところや、グリーンアンモニアを使うことによる宣伝効果を期待して多少高くても使うというところもあるかもしれません。ですので製造の動きが広がりつつあり、伊藤忠商事がインドネシアで製造するというニュースも出ていたり、別の企業が以前からサウジアラビアで太陽光パネルを敷き詰めて製造するというような話も出ています。土地が広くて日照がいいオーストラリアの西部地区でも水素を使ったアンモニアの製造の動きは続いています」
グリーンアンモニアの製造コストは将来的に下がってくるのか。
「結局は水素の製造コストがそのまま効いてきます。現在、水素の製造コストは1リューベあたり100円以上と考えられていますが、グリーン水素の製造コストが目標を大きく超えて10円くらいで安定するようになれば、通常の化石燃料由来の水素と大きな差はなくなるとみられています。こうしたコストを決定する要素として、電気代は大きな要素でして、日本では再生可能エネルギーの発電コストは高くなってしまいますが、一つのポイントとしては余剰電力や卒フィットなどの電気代が1キロワット時1~2円くらいになるかどうかです。また、ほかの要素として、水素を製造するための電解装置の価格とその利用率が挙げられます。現時点では、流通量も多くはなく、将来的に量産体制に入って量産効果が効いてくれば価格が下がってくるという見通しはあります。また、設備利用率をどう向上させるか、については様々な工夫が必要となりそうです」
アンモニア燃料が普及し始めるのは、いつ頃になりそうなのか。
「石油などの化石燃料の価格やカーボンプライシングがどう推移していくのかといった要因が複雑に絡み合うので、化石燃料の価格と比べて安くなるのがいつ頃なのかという予測は、非常に難しいです。ですが、2030年代の早い段階で、グリーンアンモニアと従来のアンモニアの価格の差はなくなってきて、将来的にはバランスしてくると予想しています」
グリーンアンモニアの価格が下がるまでの間は、事業者は燃料としては従来のアンモニアを使うことになるのか。
「化石燃料由来のアンモニアの利用を増やしても、環境負荷低減やCO2削減の面では意味がないので、そういう動きは基本的には生まれないと思います。グリーンアンモニアが大量に、かつ徐々に安く手に入るようになって、事業化の動きが本格化するという流れでしょう」