目次
- 創業ストーリー: 孤独なデザイン作業からの解放
- 製品のライフサイクル全てをカバーする豊富なラインナップ
- 共同編集のためのURL共有が生むバイラルな「PLG」
- 市場規模と将来展望: AIが拓く「10億アプリ時代」の覇者となるか
創業ストーリー: 孤独なデザイン作業からの解放
Figmaの物語は2012年、ブラウン大学の学生だったディラン・フィールド氏とエヴァン・ウォレス氏の出会いから始まる。当時、デザインの世界は「分断」されていたと彼らはみる。
デザイナーはもともと複数の専門的なツールを駆使して作業するのが当たり前だった。共同作業をしようにも、リアルタイムで同時編集できるようなツールはなく、ファイルの共有は「Draft_Final_V2_FINAL_v13」といった名前の付いた巨大なファイルをメールで送り合う、極めて非効率なものだった。

(画像=デザインの世界に「共同編集」という概念を持ち込んだ)
Google Docsのようなブラウザ上での同時作業に慣れ親しんだ世代である二人は、この「孤独な作業」を根本から変えようと考えた。そこで彼らが着目したのが、ブラウザ上で高性能なグラフィックスを描画できる「WebGL」という技術だ。3年に及ぶ開発期間を経て、史上初のブラウザ上で共同編集が可能なデザインツール「Figma」を世に送り出した。
当初の反応は芳しいものではなかった。多くのデザイナーは「透明性の向上がマイクロマネジメントや創造性の喪失につながる」と、他のメンバーが容易に作業に介入できるようになることに抵抗を示した「もしFigmaがデザインの未来なら、自分はキャリアを変える」とまで言う人もいたという。
それでも、実際にFigmaを使い始めたデザイナーたちは、ブラウザ上で共同作業する楽しさと圧倒的な効率性に気づき始めた 。URL一つでデザインを共有できる手軽さは、チーム内のコラボレーションを促進し、Figmaは世界中の企業やコミュニティに急速に広がっていったのだ。