この虫はキャッサバ畑に急速に広がり、80%もの作物損失をもたらしたのです。
キャッサバは干ばつに強いため、地元民の主食となっており、タピオカの原料としても使われています。
この被害で約2億人の食生活を脅かしました。

ところが、現地で調査をしていたスイスの昆虫学者、ハンス・ルドルフ・ヘレン(Hans Rudolf Herren)氏が、コナカイガラムシに寄生するハチを見つけたのです。
そこでヘレン氏は、この寄生バチを繁殖し、実験資金を募ったあと、飛行機を購入して、作物被害を受けている地域に寄生バチの繭(まゆ)を空輸したり、地上に放ったりしました。
放たれた寄生バチは自力でコロニーを拡大し、数年かけてコナカイガラムシの数を管理可能なレベルまで減らすことに成功したのです。
この取り組みにより、推定2000万人の命と数十億個の作物が救われ、農薬の使用も回避することができました。
ヘレンはこの功績により、1995年に世界食糧賞(World Food Prize)を受賞しています。
もしこの寄生バチの活躍がなければ、近年のタピオカブームもなかったかもしれません。
農薬に比べてメリットだらけ
寄生バチによる害虫駆除の成功例は、これだけではありません。
英名で「サムライバチ(samurai wasp)」と呼ばれる寄生バチは、アメリカ大陸において、農作物に害をなすクサギカメムシの”成敗”に成功しています。

他にも、歴史的建造物や遺物に被害を与える蛾を防ぐためにも、寄生バチが用いられています。
カナダでは、森林破壊の原因となっているアオナガタマムシを駆除する目的で、少なくとも4種の寄生バチが放たれました。
しかも寄生バチに頼ることは、農薬や殺虫剤に比べて、メリットだらけなのです。