居住空間の都市化が進むにつれ、虫たちの存在がどんどん遠いものになっています。
これでは虫嫌いになる人が続出しても仕方ないでしょう。
しかし虫が地球からいなくなってしまうと、私たちは生きていけません。
彼らは受粉を媒介することで、世界中の植物の繁殖を促してくれています。
そして人の役に立っているにもかかわらず、まったく名の売れていない虫が「寄生バチ」です。
寄生バチは「イモムシに寄生するおぞましいヤツ」というレッテルを貼られがちですが、それだけでは悪評が広がるばかり。
実は、彼らには数千万人の命を救った立派な功績があるのです。
それを詳しく見ていきましょう。
目次
- 悪魔か、救世主か
- 農薬に比べてメリットだらけ
悪魔か、救世主か
寄生バチは主に、コバチ科・ツチバチ科・コマユバチ科・ヒメバチ科に分かれ、種類も豊富に存在します。
寄生バチのメスは、蛾や甲虫のイモムシに産卵管を刺して卵を産み付けます。
その中で孵化した子どもたちは、宿主となったイモムシを内側から食いあさり、成長のための養分とします。
宿主は大抵、殺されてしまいますが、中には、毒針を打ち込んで「ゾンビ化」させ、子どもたちのゆりかごにする寄生バチもいます。
彼らの残酷なふるまいを見て、かの有名なチャールズ・ダーウィンは、次のような言葉を残しました。
「慈悲深き全能の神が、イモムシの体を貪り食うことを意図して、寄生バチを創造したとは私には納得できない」
※こちらの動画は、寄生バチのライフサイクルを写した映像です。虫が苦手な方、お食事中の方は、閲覧にご注意ください。
確かに、寄生されるイモムシからすれば、寄生バチは悪魔以外の何モノでもないでしょう。
しかし、彼らは私たち人間からすると、救世主でもあるのです。
害虫に寄生して、2000万人の命を救った
1970年代、ブラジルからの外来種として、キャッサバ・コナカイガラムシ(学名:Phenacoccus manihoti)という作物害虫が、アフリカに侵入しました。