研究チームは、食べ物やスキンシップなど他の報酬でも、同じように特異的な“感じにくさ”がある人がいるかもしれないと指摘します。

今後は音楽研究で使った質問票や脳スキャンの方法を応用し、食事・社交・運動など他の分野でも調べる計画です。

もし存在が確認されれば、依存症や摂食障害など「特定の快感の偏り」が関係する問題の理解や治療にも役立つかもしれません。

また、双子を対象にした研究では、音楽の快感の感じやすさには最大で54%の遺伝的な影響があることが示されています。

さらに、その多くは音楽の聞き取り能力や一般的な報酬感受性とは別に作用している可能性があります。

残りの割合は、育った環境や文化、人生で音楽に触れた経験などが関わっていると考えられます。

研究チームは現在、関係する遺伝子を探すとともに、この特徴が生涯変わらないものか、あるいは訓練や刺激によって変えられるのかを調べています。

将来の研究では、音楽の聴き方のトレーニングや非侵襲的な脳刺激といった方法が有効かどうかが検証されていくでしょう。

もし次に好きな曲で鳥肌が立つような感動を味わったら、その背後で働く「音と快感をつなぐ回線」にも思いを巡らせてみると面白いかもしれません。

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元論文

Understanding individual differences to specific rewards through music
https://doi.org/10.1016/j.tics.2025.06.015

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部