これを「世代間伝達(intergenerational transmission)」と呼びます。
今回の調査は、660組の親子を対象に、1980年代のフィンランドで小・中・高校生だった親(G1)と、その子ども世代(G2)の通学習慣を同じ年齢帯で比較。
世代ごとに通学距離、性別、居住地(都市か農村か)、親の学歴や世帯収入といった社会経済的要因も考慮しました。
親が「徒歩・自転車」通学だと、子供も同じ方法で通学しやすくなる
分析の結果、親世代が子どもの頃に自転車や徒歩で通学(ACS)していた場合、その子どももACSを選ぶ確率が控えめながら有意に高いことがわかりました。
親の通学の影響を子供も受けるのです。
研究チームは、この点、次のように語っています。
「親自身の徒歩や自転車通学通学に対する経験や態度は、子ども自身の通学をどのよにサポートするかに影響します。
子どもが歩いたり自転車に乗ったりして通学することに慣れていて、それを前向きにとらえている人は、その習慣を次の世代に伝える可能性が高くなるのです」
そしてこの親の影響は特に小学生時代で強くなり、中高生になると友人関係や部活動など、親以外の要因が増えて影響力は弱まります。

とはいえ、最も強い影響因子は世代を問わず「通学距離」であり、3kmを超えるとACS率が大きく低下しました。
学校まで1km未満の子どもはほぼ全員が徒歩や自転車通学をしていましたが、4kmになるとその割合は半分以下に減少しました。
加えて、研究チームの予想どおり、1980年代の親世代の方が現代の子ども世代よりもACS率が高かいことも分かりました。
都市化や学校の統廃合、保護者の送迎文化などが要因の一部となっているはずです。
この研究から得られる示唆は明確です。
短い通学距離と安全な環境を確保することがまず第一に重要であり、それがACSの普及に直結します。