では、私たちはこの問題にどう向き合えばよいのでしょうか?
研究の著者らは、まず医師と企業の経済的な関係を厳正に精査・管理する利益相反管理の重要性を強調しています。
支払いの開示徹底や高額な謝礼の制限など制度面の透明性向上は、患者の信頼を守る上で欠かせません。
そしてそれと並行して、患者から苦情が多い医師に対しては同僚医師からの段階的介入といった“人間系”のアプローチも導入すべきだと示唆しています。
実際、苦情リスクの高い医師に対し同僚がフィードバックを行う段階的介入モデルが取られたところ、その後の苦情件数や医療過誤訴訟のリスクを減少させ、プロフェッショナリズムの向上に効果を上げたとされています。
こうした人間による監督・指導と組織的な利益相反管理の双方からの対策によって、医師が患者本位の姿勢を維持できるよう支援することが重要です。
医療における最優先事項はあくまで患者の幸福と安全であり、その信頼を損なうような要因は二重であれ何であれ、見過ごすことはできません。
今回の研究は、医療従事者自身と社会全体に対して、医師の倫理と責任について改めて考える機会を突き付けていると言えるでしょう。
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元論文
Unsolicited Patient Complaints and Industry Payments for US Physicians
https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2025.26643
ライター
川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。
編集者
ナゾロジー 編集部