2015年から2023年の間に、アメリカ国内の医師や病院が受け取った金額の合計は728億ドルで、そのうち研究とは関係ない一般的な謝礼(講演料や相談料、食事代、旅行費など)は223億ドルにものぼりました。
このような背景から、「患者からの苦情の多さ」と「企業からの支払いの多さ」という2つの問題の関連性が疑われるようになってきました。
あえて簡易な表現をとれば、「評判の悪い医者は研究費ではない多額のお金を企業から受け取りる傾向があるかどうか」が焦点になってきたのです。
そこでアメリカのジョンズ・ホプキンズ大学とヴァンダービルト大学の研究チームは、大規模な調査を行い、2つの関連性を調べることにしました。
苦情の多い医師は業界からお金をもらいやすい

今回の研究では、アメリカのさまざまな地域で患者からの苦情を記録する「PARS」というシステムを導入している医療機関に所属する医師の記録が調べられました。
対象となったのは71,944人の医師で、2015年7月から2020年6月までの5年間に集められたデータをもとに分析されました。
研究では、医師に対して寄せられた「望まれざる患者からの苦情(UPC)」の件数や深刻さを点数化した「PARSインデックス」と呼ばれるスコアを使いました。
また、同じ期間に各医師が製薬会社や医療機器メーカーなどから受け取った一般的な支払い(研究費以外の講演料や食事、贈り物など)も調べられました。
それぞれの医師について、もっとも高かったPARSインデックスと、もっとも多く受け取った年の支払い額に注目して、両者の関係を調べました。
PARSインデックスは「0(苦情なし)」「1〜20」「21〜50」「51以上」の4段階に、支払い額は「0ドル」「1〜4,999ドル(約50万円未満)」「5,000ドル以上(約50万円以上)」の3段階に分けられました。