アメリカの保健福祉省では、年間5,000ドルを超える支払いがあると「重要な経済的利害関係がある」とされています。この研究でもその基準が使われました。
調査結果によると、全体の約68%の医師が業界から何らかの支払いを受け取っており、そのうち11%は年間5,000ドル(約75万円)を超える高額な支払いを受け取っていました。
また、少なくとも1件の苦情があった医師は43.1%、苦情がなかった医師は56.9%でした。
ここで重要なのは、「患者からの苦情」と「業界からの支払い」が両方とも多い医師が実際に存在していたことです。
たとえば、年間5,000ドル以上の支払いを受け取っていた医師のうち約54%は、患者から1件以上の苦情を受けていました。
さらに、苦情の件数が多い傾向は、受け取った金額が多い医師ほど強く表れていました。
たとえば、最も高いPARSインデックス(51以上)を持つ「問題の多い医師」は、高額な支払いを受け取っていたグループの約6.9%を占めていましたが、まったく支払いを受けていない医師の中では3.1%にとどまりました。
統計の計算によると、もっとも苦情が多い医師は、苦情がなかった医師に比べて、高額な支払いを受け取っているオッズが約1.7倍であることがわかりました。
この結果は、性別や年齢、専門分野、勤務している地域や病院の種類(大学病院かどうか)などを考慮しても変わりませんでした。
実際には、男性医師は女性医師よりも1.9倍ほど高額な支払いを受けやすく、大学病院以外の医師もやや多く支払いを受けていました。
つまり、今回の大規模な調査から、「苦情が多い医師ほど、業界からのお金を多く受け取っている」という傾向がはっきりと見えてきたのです。
なぜ苦情の多さともらうお金が相関するのか?

患者の苦情と業界からの謝礼という、一見無関係にも思える二つの要因が結び付いた今回の結果は、医療の現場に大きな示唆を与えます。