いずれにしても、アラスカでの米ロ首脳会談はプーチン氏にメリットがある。ロシアが孤立していないことを世界に示す絶好のチャンスだからだ。同時に、ウクライナ戦争についても、ロシア側の正当性を訴える機会となる。ちなみに、アラスカは1867年3月30日、米国がロシア帝国から買収した地だ。両国の因縁があるアラスカは米ロ首脳会談の開催地としては最高の書割だ。

明確な点は、ウクライナを含む欧州諸国はプーチン氏が停戦を願っていないと受け取っている。プーチン氏は首脳会談でトランプ氏がどのようなオファーを提示するかを見守るだけに終わるのではないか。実際、クレムリン顧問のユーリ・ウシャコフ氏は「次回の米ロ首脳会談はロシア領土で開催」と米国側に提案したことを明らかにしている。アラスカの米ロ首脳会談はあくまでも第1回目の会談であり、第2、第3の首脳会談が予定されていることになる。それまで、ウクライナ戦争の停戦はあり得ないことになるわけだ。

なお、米メディアの報道によると、プーチン大統領は首脳会談に先立ち、ロシアがウクライナ東部のドネツク州とルハンスク州を完全に掌握することを要求している。プーチン大統領は6日、モスクワを訪問した米国特使スティーブ・ウィトコフ氏に伝達済みという。米ロ首脳会談の開催は現時点ではプーチン氏の外交勝利に終わりそうだ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2025年8月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。