最終回ではスティーブン・グレアム演じる父親が抑えてきた怒りを表面化させる。最後で妻と抱き合う場面は画面から目を離せなくなるほどだ。

個人的に思ったこと

「繊細な10代の少年」にとっては、大人の行動が一喜一憂の元になり得る。

主人公の父は子供たちを愛し、子供たちに暴力をふるうことはないし、「男であれ!」と要求もしない。それでも、少年は無言のメッセージを感じ取ってしまう。「父が満足するほどの自分ではない」という思いをどこかで抱いてしまう。

ドラマの父は家族を愛し、それを行動にあらわす。家族同士はとても仲が良い感じだ。

それでも、筆者はこの父親から暴力の影のようなものを感じ取った。「自分は家族に絶対に手をあげないぞ」と誓うものの、暴力的なものを抱え込んでいるように見えた。

だから、筆者は最終回をハラハラしながら見た。いつこの父親が自分の中にある怒りや暴力を外に出すのか、と。最後にはあることが起きて、父親は感情を爆発させる。

少年は父の中に隠された怒りや暴力をどこかで拾ってしまったのだろうか。

欠けていたかもしれない視点

最後まで見て、欠けている視点があるように思えてならなかった。

それは、犠牲者やその家族のことだ。ドラマは少年とその家族の話だから、あえて犠牲者の側の視点は出さなかったかもしれない。意図的な排除だったのかもしれない。

それでも、人として、犠牲者やその家族のことに思いをはせ、悲しみを感じる部分があってもよかったのではないか。少年が少年院あるいは刑務所に入ったとき、人の命を奪ったことの重みを感じたのかどうか。少年の家族は自分の家族のことだけではなく、子供を失った側の悲しみを想像しなかったのだろうか。こうした点をほんの少しでもドラマに反映させても良かったのではないか。

編集部より:この記事は、在英ジャーナリスト小林恭子氏のブログ「英国メディア・ウオッチ」2025年7月24日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、「英国メディア・ウオッチ」をご覧ください。