表7.1は、相対海面上昇と絶対海面上昇およびその差分である垂直地盤変動の関係を表している。相対海面上昇が大きかったテキサス州ガルベストンやルイジアナ州グランド・アイルでは、垂直地盤変動(地盤沈下)が大きかった。絶対海面上昇で見ればどの地点もそれほど大きくはないことが分かる。

表7.1 絶対海面上昇(ASLRインチ/年)は、相対海面上昇(RSLR)と垂直地盤変動(VLM)の合計

具体的な潮位系のデータを見ると、どの地点も、海面上昇の速度は計測開始以来ほぼ一定で、近年になって地球温暖化が原因で「海面上昇の速度が加速」という現象は見られない。以下はその1つの例。

ニューオーリンズとミシシッピデルタ

ルイジアナ州グランド・アイルの長期潮位計測定値によると、過去100年間で海面は平均年間0.36インチのペースで、合計3フィート以上上昇しました(図7.4)。垂直地盤変動(沈下)は年間-0.28インチと推定されています。表7.1には、絶対海面上昇が年間+0.08インチと示されています。

図7.4. ルイジアナ州グランド・アイルの潮位計測定値(NOAAからダウンロード、2025年4月22日)

ミシシッピ川デルタ地域における海面上昇と土地の喪失の問題は複雑であり、その主な要因は地盤沈下とミシシッピ川による土砂の輸送量の減少です。1950年代以降、流域にダムが建設されたことで、ミシシッピ川の浮遊土砂の量は約50%減少しました(Maloney 2018)。ルイジアナ州沿岸の新しい地盤沈下マップによると、この沿岸地域は地下水や資源の取水により、年間約1/3インチの割合で沈下しています(Neinhuis et al. 2017)。この都市の標高は平均して海抜1~2フィートであるため、人為的な温暖化による海面上昇は、ニューオーリンズの問題の主な要因とは言い難いでしょう。

海面上昇については、今後、急激に起きるという予測がある。これについてCWGは以下のように論じている。