この結果は、ラット脳のPAGには「笑いと遊び心」を司る脳回路が存在していることを示しています。
笑いと遊び心がセットで制御されているのも、偶然ではありません。
過去の研究では、笑い声と遊びの直接的な関係性も示されており、くすぐられて笑い声をあげやすいラットほど、遊び好きであることが判明しています。
研究者たちは「たとえば子供たちが(ヒーローと悪の怪獣の戦いなど)喧嘩ごっこをするときも、常に笑い声をチェックしています。遊び相手が笑わなくなったら、喧嘩ごっこは中止されます」と述べ、笑いは遊びの維持を見極めるためにも切り離せない要素だと結論しています。
しかしなぜわざわざ動物たちは偽の攻撃と偽の逃走という要素を楽しいと感じるのでしょうか?
研究者たちは遊びを通して、本物の捕食者や競争相手に出会ったときのシミュレーションを脳に行わせている可能性について言及しています。
これまでの研究で人間もラットも、遊んでいるときに最も創造性が最も高く思慮深くなることが知られています。
これは「うつ病」の状態とはまさに逆です。
うつ病になると、楽しい経験をしても笑えなくなり、遊びをしても楽しめなくなってしまうことがあるのです。
そのため研究者たちは「笑いと遊び心」を刺激する薬を探すことは、うつ病を治療する有効な目標になると述べています。
また近年の研究では、遊びができない状態になった動物が憂鬱になったり、社会的関係を築くのに失敗したり、ストレスから立ち直る回復力が低下するなど、遊びの欠如が脳にマイナスの影響を与えることがわかってきました。
遊びたいという本能的な欲求は私たちの脳深くに刻み込まれており、精神的に健康でいるには適度な遊びが必要なのでしょう。
人からいじられるとすぐにキレてしまったり、遊び心が低下してくると、他者の関係を築くことが難しくなり、うつ状態に向かってしまうことはあるかもしれません。