この結果は、恐怖や怒りと同様に、遊びも脳の奥深くに刻み込まれた本能的なものであることを示しています。
そこで今回、ベルリン・フンボルト大学の研究者たちは「笑いや遊び心」を司る脳回路が、脳のどこにあるかを調べることにしました。
調査にあたってはラットたちの脳に電極が刺し込まれ、ラットが笑ったり遊んでいるときの脳活動が調べられました。
研究者たちは手を使ってラットと一種の「喧嘩ごっこ」を行い、ラットを手を使って追いかけてくすぐったり、逆にラットに追われたりを演じます。

ラットたちも犬や猫のように「喧嘩ごっこ」をして遊ぶ習性があるためです。
すると中脳にある水道周囲灰白質(PAG)と呼ばれる脳領域に存在するいくつかのニューロンが大きく活性化していることがわかりました。

この中脳の領域は動物の脳の中でも最も古くから存在している部位であり「闘争と逃走」という相反する行動を制御すると同時に、鳴き声にも関与することが示されていました。
「喧嘩ごっこ」においては偽の攻撃と偽の逃走劇が交互に演じられ、ラットたちは鳴き声を上げながら遊びます。
そのため闘争と逃走そして鳴き声を司るPAGは遊びを制御する部位として有力な候補と言えるでしょう。
ただし、遊びによって活性化するという事実だけでは、PAGが遊びの制御をしていると断定することはできません。
そこで次に研究者たちは、ラットの脳を操作し、PAGの機能を破壊することにしました。
するとラットたちはくすぐられても笑声をあげなくなり、遊びに対する興味も失ってしまいました。