しかし人間の場合、放射線や高熱により体の一部が燃えたとしても、数十キロの生体組織が全て一瞬で「気化」することはありません。

というのも原爆で発生する熱の持続時間は瞬間的なものだからです。

動物の肉を一瞬だけ高温にさらしても内部が生焼けであるように、いくら高温でも一瞬で全身を気化させるのは困難です。

爆発の衝撃波は熱線よりも遅れて届きます。

そのため「人の影」を作った人間の姿が見当たらないのは、熱線が影を作ったあと爆風によって吹き飛ばされたか、遺体収容時に運びだされたためと考えられます。

とはいえ被害者が生存できたわけではないでしょう。原爆が生み出した凄惨な被害の現実は変わりません。

しかし科学的な視点で見ると、原爆が残した人影は少し違った解釈で見えてくるかもしれません。

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参考文献

Why did the atomic bomb dropped on Hiroshima leave shadows of people etched on sidewalks?
https://www.livescience.com/nuclear-bomb-wwii-shadows.html

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部