「肉の部品(アルファガル)」は単体では無害ですがマダニの唾液と一緒に入り込むことで免疫系が勘違いを起こして敵と認識し、次回以降にアルファガルを含む哺乳類の肉を食べると、免疫反応が体を駆け巡りアレルギーを起こしてしまうのです。
不良(マダニの唾液)と一緒にやってきたことで何の害もない真面目な学生(アルファガル)も不良の一味とし警察(免疫)に認定されてしまうようなものです。
この症例で最も一般的にみられるのが胃腸症状で下痢や嘔吐などが起こります。
また蕁麻疹が出る患者も報告されています。
しかし反応が激しいとアナフィラキシーを発症する患者もおり、呼吸困難など深刻な状態に陥ることもあります。
2023年のCDCの調査ではアルファガル症候群について医師たちがどれほどの知識を持っているかが確かめられていましたが、42%はそもそもアルファガル症候群を知らず、また知っている医師も正確に診断できる自信があると答えたのは35%ほどになっていました。
しかし本当の問題は、もっと別にありました。
アルファガル症候群に治療法が存在しない

最も大きな問題、それは現在のところアルファガル症候群の治癒法がないことです。
そのためアルファガル症候群になってしまった患者は哺乳類の肉や乳製品全般の摂取を避ける生活をはじめることになります。
ただアルファガルは哺乳類ではない鶏肉や魚肉には含まれていないため、ある程度の代用は可能です。
(※なお余談ですが人間の肉にもアルファガルは含まれていません)
また幸いなことに、一度噛まれただけならば症状は5~6年かけてゆっくりと収まっていきます。
これはアルファガルを敵と認識する免疫細胞の記憶がその期間しか持続しないことに起因します。
しかし二度目に噛まれるとアルファガルに対する免疫記憶が一生涯続くようになり、多くの人は二度と哺乳類の肉を食べられなくなってしまいます。