実際、今回の患者さんも手術や薬剤による治療だけでは再発を防げませんでしたが、免疫そのものに対する治療によって長期寛解に至りました。

本症例の経過は、腫瘍の切除だけでは不十分な場合があり、免疫の異常を正すことでウイルスを抑え込み、再発を防げることを示唆します。

今後は、原因不明の免疫異常が疑われる皮膚がんでは、原因ウイルスの関与やT細胞機能を評価し、状況に応じて免疫機能の回復をめざす治療(例:薬物による免疫療法や、厳密な適応のもとでの造血幹細胞移植など)を“選択肢の一つとして”検討する流れが想定されます。

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元論文

Resolution of Squamous-Cell Carcinoma by Restoring T-Cell Receptor Signaling
http://dx.doi.org/10.1056/NEJMoa2502114

ライター

川勝康弘: ナゾロジー副編集長。 大学で研究生活を送ること10年と少し。 小説家としての活動履歴あり。 専門は生物学ですが、量子力学・社会学・医学・薬学なども担当します。 日々の記事作成は可能な限り、一次資料たる論文を元にするよう心がけています。 夢は最新科学をまとめて小学生用に本にすること。

編集者

ナゾロジー 編集部